喜運寺 − 指ヶ谷町以外附近各町

喜運寺

光国山喜運寺、曹洞宗。 足利長林寺末寺、戸崎町八十二番地にある。 豆腐延命地蔵尊がある、 其の略縁起に云ふ。

抑も当寺に安置し奉る地蔵尊は昔三河の国にましヽて弘法大師の御作と言伝ふ。 然るに故あ り、何日の頃とかや当山門前に豆腐を業とする者あり、其女子血病を戞る事三年に及故に、夫婦共地蔵尊を尊信し奉る事昼夜怠る事なし。 或る日、一人の異僧来つて曰く、我に豆腐を与へ給へ、汝が娘の難病を助くべしといふ。 意に従つて豆腐を与ふ。 翌日より彼の血病頓に癒る事を得たり。 夫婦共に奇異の思をなし、地蔵尊へ参詣し奉るに、彼豆腐門前にありと。 又男子悪瘡を煩ふこと数年に及ぼすありて至心に地蔵尊を礼拝し奉れば日ならずして癒る事を得たり。 又一婦人一男子をもうく、然る一滴も出でずして夫婦共に是を戞ひ、至心に日参すること七日に至る。 立願満る夜、しきりに乳袋痛をなし、俄に乳の出る事を得たり。 夫より遠辺の四民難病を煩ふもの豆腐を献じ至心に我難病御救給へと祈念奉れば願望成就せずといふことなし、是より何時となく世の人豆腐地蔵尊と言伝ふ。 又延命地蔵経に曰く、種々の身を現して六道に遊化し衆生を済度し給ふと説給へば或は異僧と現じ或は童男童女の身ともなり給へば疑ふ事勿れ。 又御夢想に依て当山よりやくよけの御薬を施し、菩薩の利益を蒙るもの挙て算へ難し。 依て諸人快楽子孫繁栄ならしめん事を希ふ意趣なるのみ云々。 門前の豆腐屋にて供物の為めの豆腐切符を売捌いて居る。