三都花街めぐり
目次
東京 東京花街総記 東京花街心得帳...
東京花街総記
大雲京五十四花街「さすがに大東京である」と、格別感嘆したり、自慢したりするには当らないことだとおもふけれど。 武新野は月の入るべき峰もなし尾花が末にかゝる白雲 と詠まれたその「武蔵野」の凡そ半分にも當る廣い面積を取り入れて新しく建設された「大東京」三十五區の中、花街をもたない區は場末も場末もうんと場末である「葛飾」「杉並」の二區のみで、あとの三十三區は一區少きも一箇所、多きは三筒所、大なれ小なれ花街を有し、その総数五十四花街。そこに約一万一千の芸妓と五千を降らない娼妓及び二千八百の私娼がゐる。...
九段
区域 麹町区富士見町一丁目から麹町三番町の各一部に跨がる間で、電車線路をへだてゝ、ほゞ九段招魂社と相対してゐる位置。 明治二十五年頃、山の手一と云はれた顔役柴田喜太郎といふ人が、土地発展策として芸妓屋と待合を開いたのが此花街の始まりで、当時はわづかに芸妓屋四軒・待合二軒であつたが、客に対しては諸事軽便に薄多主義を採ると共に、芸妓屋に対しては玉祝儀は必ず翌日払ひといふ類のない制度を採用した為、芸妓屋は日銭が入って生活が楽なので我もヽと集まり、震災前すでに三百五十余名の芸妓九十五軒の待合茶屋を擁して、数に於て市内の第八位を占めるに至った。...
四谷荒木町
市電新宿線の「伝馬町二丁目」又は「塩町」停留場下車、いづれよりするも距離は三、四丁、丁度その両停留場の中はどから北へ折れて入ってゆく。 別称を「津の守」といふ。 四谷区荒木町二十七番地とそれに隣接せる十五、六、七、八番地及び二十六番地の各一部を限った区城で、そこに八十軒の芸妓屋と六十軒の待合がゴタヽと目白押しに軒を並べた文字通の狭斜街。...
四谷大木戸
区域 四谷区永住町三十六、七番地に亙る一廓で、市街電車・乗合自働車ともに新宿線の「大木戸」停留場下車、山手劇場横を北に入れば直ぐ。 省線新宿駅表口からは電車線路に沿ふて約十町。...
麻布
麻布区山元町、網代町に跨がる。 市街電車は目黒線の「一ノ橋」或ひは「二ノ橋」下車、省線電車は「田町駅」が最も近い。 「山ねこ」の弁...
東京花街心得帳
東京の三業制度 東京の花街は凡て芸妓屋、料理屋及び待合茶屋から成る三業制度である。 京都・大阪は芸妓置屋と貸席との二業組織で、料理店は加はって居らない。...
浅草
区域 浅草公園裏手から馬道二三丁目の各一部及び千束町二丁目にわたる一帯、可なりひろい区域で、芸妓屋・待合はもっぱら千束町二丁目の公園寄に集中してゐる。 市街電車は「雷門」下車、仲見世の雑踏に揉まれ公園を抜けて料亭「一直」の方面に出るか、或ひは「田原町」に下車して東へまっすぐ十町ばかり行けば、所謂「浅草花街」の中心地である。...
柳橋
位置は両国橋の西詰。 市街電車は早稲田—錦糸堀線又は新宿—緑町線の「両国」停留場下車、或は本石町—雷門線の「浅草橋」で降りても、近きは二町遠きも四五町を出でぬ距離である。 「柳橋」とは神田川の落口に架した橋の名で、その橋を中に挟んで北は下平右衛門・新片町、南は元柳町の両岸に跨がつて居るところから、橋の名がやがて花街の名となったのである。...
浜町
両国橋から下流新大橋を経て中洲に至る大川の右岸一帯の地域。 市街電車は築地—両国線の「浜町」停留場を最も便とし、米沢町附近は両国停留場、中洲町は猿江線の「浜町中之橋」下車が最も近い。 「矢の倉」「浜町」「中洲」と別々に呼んでゐるが、便宜上こゝには浜町なる総称の下に一括しておく。...